特許法等の一部を改正する法律~その2~

デザイン

令和元年の意匠法改正により、関連意匠制度が、主に以下の点について改正されました。

(1)「関連意匠のみに類似する意匠」の登録可能化   (2)関連意匠の出願可能な期間の延長   (3)新規性要件、創作非容易性要件、及び先願の規定等の一部適用除外化

改正意匠法は令和2年4月1日から施行されています。

(2) 関連意匠の出願可能な期間の延長

旧法においては、関連意匠を出願できる期間は、本意匠の意匠公報発行日前に限られていました。令和元年の意匠法改正においては、この関連意匠を出願できる期間が、基礎意匠の出願の日から10年を経過する日前までとされました。つまり、関連意匠を出願できる期間が大幅に長期化され、ユーザにとってより使いやすい制度となりました。

ところで、関連意匠の出願期間を基礎意匠の出願の日から10年経過する日前としたことに伴い、関連意匠を登録する時点で、本意匠の2年目以降の登録料を納付しない場合や、無効の審決が確定した場合等、本意匠の意匠権が消滅していることもあり得ます。他方、本意匠の意匠権の消滅後も関連意匠の登録を可能とすると、一度パブリックドメインとなった権利が復活することになるため、第三者にとって不利益が生じます。このため、基礎意匠の出願から10年を経過する前であっても、消滅等した登録意匠を本意匠とする関連意匠は、登録されないこととされました。ユーザが長く使用する自動車などのデザインについて意匠権者が2年目以降の登録料を納付せずに意匠権が消滅するケースは少ないですが、流行に左右される、もっとライフサイクルの短い製品デザインについては、すでに本意匠の意匠権が消滅していて関連意匠を登録できないケースがあり得ます。

また、専用実施権は設定契約で定めた範囲において意匠権と同様の効力を有するものであることから、本意匠及びその関連意匠の意匠権の一部に専用実施権が設定されている場合、権利の重複部分について二以上の者に物権的請求権が成立することになり、関連意匠制度の制度趣旨に反することになります。そこで、令和元年の意匠法改正で関連意匠のみに類似する関連意匠の登録を認めることに伴い、関連意匠を本意匠とみなして関連意匠の登録をする場合においても、本意匠に専用実施権が設定されている場合は意匠登録を受けることができないこととされました。

特許法等の一部を改正する法律

木目調デザイン

令和元年の意匠法改正により、関連意匠制度が、主に以下の点について改正されました。

(1)「関連意匠のみに類似する意匠」の登録可能化   (2)関連意匠の出願可能な期間の延長   (3)新規性要件、創作非容易性要件、及び先願の規定等の一部適用除外化

改正意匠法は令和2年4月1日から施行されています。

もともと意匠制度は、意匠の創作に対して、一定期間、独占権を付与するものであるため、一の創作に対して二以上の重複した権利の付与は原則認められませんでした。しかしながら、意匠の創作においては、一つのコンセプトから多くのバリエーションの意匠が創作されることが多いです。関連意匠制度は、このような複数のバリエーションの意匠について、所定の要件を満たす場合に関連意匠として登録することを認める制度です。

関連意匠として登録された意匠に関する独特な部分としては、本意匠とは別の意匠権であるが、権利期間が(関連意匠の設定の登録ではなく)本意匠の設定の登録から20年以内(改正後は基礎意匠の意匠登録出願の日から25年)となることや、権利の移転や専用実施権の設定が、本意匠(改正後は「基礎意匠」)と全ての関連意匠を同時に同一の者に対し行う場合に限られること等が挙げられます。

(1)「関連意匠のみに類似する意匠」の登録可能化

改正前においては、本意匠には類似しないものの、関連意匠には類似する意匠については、登録を受けることができませんでした。この点について、改正意匠法においては、製品等のデザインに少しずつ改良を加えていく群の意匠の開発手法が増加していること等を踏まえて、先の関連意匠を本意匠とみなして関連意匠として登録することが認められることとなりました。同様に、関連意匠に連鎖する段階的な関連意匠も登録可能となりました。

また、関連意匠にのみ類似する関連意匠を登録可能とすることに伴い、最初に選択した本意匠と、本意匠とみなされた関連意匠とを区別するために、最初に選択した本意匠は、「基礎意匠」と呼ばれます。なお、関連意匠の権利期間は、本意匠が基礎意匠であるか、本意匠とみなされた関連意匠であるかを問わず、基礎意匠の出願日から25年経過した日に満了します。

ドイツ語・英語の誤訳と引用文献

翻訳

特許を取得するためには、先ず特許出願を行い、特許庁の審査官による審査を受ける必要があります。審査官は、願書に添付された特許請求の範囲に記載された発明を理解し、それを否定し得る似たような発明をサーチします。審査官は、サーチの結果から、本件特許出願よりも先に公開されて世に知れ渡った発明が記載された文献(すなわち、引用文献)を引用して、本発明の新規性や進歩性を否定します。

このとき、引用文献の日本語が正確に記載されていて、技術的にも不明点が無ければ問題ないのですが、引用文献の日本語が不明確で理解できない場合も多々あります。

例えば、一文が長文で記載されているため理解が難しかったり、主語が省略されているため主語が分からなかったりします。

また、一見何の違和感もない場合でも、その引用文献が外国語からの日本語の翻訳文だった場合には注意が必要です。というのも、翻訳文の精度は翻訳者の力量に左右されるため、日本語の原文である外国語に当たってみると、実際はそんな内容は記載されておらず、誤訳だったりします。この場合、誤訳によってその引用文献に記載された内容が、たまたま本発明を否定し得るものになっていたということです。

もちろん、審査官は、その引用文献に誤訳が生じていることなど知りません。そこで、こちらとしては、その原文の記載に遡り、その引用文献には本発明を否定し得る内容は記載されていない旨を審査官に説明します。

また、この引用文献が既に特許されている場合、この特許は間違った内容で許可されていることにもなるので、翻訳は特許取得にとって極めて重要です。

翻訳者にとって慣れれば決して難しくない翻訳ですが、英語の場合に関係代名詞が掛かっている先行詞を間違えてしまうと、とんでもない誤訳となってしまいます。一方で、ドイツ語の場合は、文法が厳格なため、文法構造は複雑ですが、関係代名詞が掛かっている先行詞を見つけやすい場合が多いです。

特許権侵害と権利行使について~その2の続き~

急発進防止装置を付けて高速道路を走る

Cさんの特許権をD社が侵害している可能性があったため、D社に対して警告状を送付することとなりました。

警告状は、その後侵害訴訟に発展した場合に、不意打ちで提訴したわけではなく相手に対してきちんと警告していたことの証明であり、また相手にそんな特許の存在を知らなかったと白を切られることを防止するものでもあります。

そして、後日D社からの回答がありましたが、そこには「D社製品は「ドライバーが急発進防止モードとノーマルモードを切り替える切り替えスイッチ」を備えていないため、侵害は成立しない」旨記載されていました。こちらとしては、この回答は予想通りのものでした。

しかしながら、D社製品を車に取り付けた状態で、アクセルペダルや車の電源スイッチなどを特定の順序で操作すると、急発進防止モードが解除されてノーマルモードに切り替わるため、切り替えスイッチが実質的に備えられていることになります。これをD社自身が認識していたかどうかは定かではないものの、2回目の警告状をD社に送付し、その中で特定の操作により急発進防止モードが解除されてノーマルモードに切り替わることを示すことにしました。

そして、後日D社からの2回目の回答がありましたが、そこには「運転中に、急発進防止モードを解除してノーマルモードに切り替えるために、一度停車して複雑なアクセルペダルや車の電源スイッチの操作をすることは現実的ではない。そもそも、切り替えスイッチは備えていない。」旨記載されていました。

残念ながらこちらとしては、これに対する有効な反論が見つかりませんでした。

D社製品は、いわゆる切り替えスイッチを有しておらず、一度急発進防止装置を車に取り付けたら、それ以降は急発進防止モードが適用されてしまうため、少し強く加速したり、坂道で少し強めにアクセルペダルを踏んだりしただけで、発進が抑止されてしまいます。そのため、ユーザからすれば使いにくい製品であるにもかかわらず、このような商品にとって重要な「切り替えスイッチ」という機能を欠いているため、特許の網にかからないという、なんともむず痒い結果となりました。

特許権侵害と権利行使について~その2~

車の急発進防止

ある時、特許権者であるクライアントのCさんから、D社が自社の特許権侵害をしている可能性があるので、できればD社による製品の製造販売を止めさせたいと相談を受けました。

最近、高齢のドライバーが車でコンビニに突っ込んだり、繁華街を暴走して人をはねたりするニュースをよく見ますが、Cさんは、自動車の急発進防止装置に関する特許を持っています。急発進防止装置は、ドライバーが誤ってアクセルを踏み込んだ時に異常を検知して急発進させない機能を有するため、このような事故を防止できます。

一般に、他社の製品の製造販売が自社の特許権侵害になるかどうかの判断のために、D社の製品(イ号製品という)と自社の特許権を比較しなければなりません。

Cさんはすでに自分の持っている特許と、D社のイ号製品を比較・検証しており、イ号製品は、特許の5つほどの構成要件のうち、1つだけは満たさないかもしれないと考えていました。特許が5つの構成要件を有するとは、つまり、その特許が成立するためにはそれら5つの特徴をすべて充足している必要があり、侵害に当てはめれば、イ号製品が5つの特徴をすべて充足していなければ、特許権侵害は成立しません。

満たさないかもしれないと思われた1つの構成要件とは、「ドライバーが急発進防止モードとノーマルモードを切り替える切り替えスイッチ」でした。急発進防止モードで走行中は、アクセルペダルの急な踏み込みは異常と判断されて、急発進が抑制されますが、ノーマルモードでは急発進が抑制されません。ノーマルモードは、坂道発進などでアクセルペダルの踏み込みが必要な場合にも、通常通り発進できるためのものです。

しかし、D社の製品はこのような切り替えスイッチを有しておらず、一度急発進防止装置を車に取り付けたら、永続的に、アクセルペダルの急な踏み込みが異常と判断され、急発進が抑制されるというものでした。

ところが、Cさんは、D社の製品を車に取り付けた状態で、アクセルペダルや車の電源スイッチなどを特定の順序で操作すると、急発進防止モードが解除されてノーマルモードに切り替わることに気づきました。これは、D社の製品が実質的に切り替えスイッチを有していることに相当します。

そこで、特許権侵害の成立が疑われるため、D社に対して警告状を送付することとなりました。