特許権侵害と権利行使について~その1~

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旋盤の側面図

時々、特許権者であるクライアントから、自社の特許が他社によって侵害されているあるいは他社が自社製品を製造販売しているので、どうにかならないかと相談を受けることがあります。このような場合、特許権者は自分の特許が侵害されたと信じており、かなり興奮されています。

一般に、他社の製品の製造販売が自社の特許権侵害になるかどうかの判断のために、他社の製品(イ号製品という)と自社の特許権を比較しなければなりません。

あるケースでは、特許権者(Aさん)は、他社(B社)が類似商品を作っていることを発見したため、一刻も早く何とかしなければと思い、事務所に駆け込まれて来ました。しかし、Aさんは、自社の特許権の内容をきちんと把握していませんでした。そこで、Aさんがどんな特許を持っているのかを改めて確認すると、特許を受けたものは或る切削工具であり、請求項1には切削工具に取り付けられた刃先の角度に関する数値限定(具体的には、角度が25°~30°など)が記載されています。このような数値限定を行うことは、本発明と引用文献との違いを明確にするためには有効ですが、つまり進歩性をクリアするためには有効ですが、特許後の権利範囲は狭くなってしまいます。

確かに、B社製の切削工具の外観・見た目は、Aさんの特許明細書の実施形態に開示された具体例の外観・見た目と似ていますが、そもそも比較すべきは実施形態ではなく、特許請求の範囲の請求項1です。

そこで、B社製の工具の刃先の角度を精密な測定器具で測定したところ、その角度はなんと24.9°でした。よって、「25°~30°」の要件を満たさず、権利侵害にはなりません。B社製の切削工具の刃先の角度は、本件特許の権利範囲外となるような、たまたま近い数値だったとも考えられますが、実際は、B社はAさんの特許権の存在を認識していて、特許件侵害を回避するよう刃先の角度を変更したと思われます。

やはり、請求項1で数値限定を行うと他社に特許件侵害を回避され易く、数値限定せずに特許を取ることの重要性を再認識しました。

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