特許権侵害と権利行使について~その2~

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車の急発進防止

ある時、特許権者であるクライアントのCさんから、D社が自社の特許権侵害をしている可能性があるので、できればD社による製品の製造販売を止めさせたいと相談を受けました。

最近、高齢のドライバーが車でコンビニに突っ込んだり、繁華街を暴走して人をはねたりするニュースをよく見ますが、Cさんは、自動車の急発進防止装置に関する特許を持っています。急発進防止装置は、ドライバーが誤ってアクセルを踏み込んだ時に異常を検知して急発進させない機能を有するため、このような事故を防止できます。

一般に、他社の製品の製造販売が自社の特許権侵害になるかどうかの判断のために、D社の製品(イ号製品という)と自社の特許権を比較しなければなりません。

Cさんはすでに自分の持っている特許と、D社のイ号製品を比較・検証しており、イ号製品は、特許の5つほどの構成要件のうち、1つだけは満たさないかもしれないと考えていました。特許が5つの構成要件を有するとは、つまり、その特許が成立するためにはそれら5つの特徴をすべて充足している必要があり、侵害に当てはめれば、イ号製品が5つの特徴をすべて充足していなければ、特許権侵害は成立しません。

満たさないかもしれないと思われた1つの構成要件とは、「ドライバーが急発進防止モードとノーマルモードを切り替える切り替えスイッチ」でした。急発進防止モードで走行中は、アクセルペダルの急な踏み込みは異常と判断されて、急発進が抑制されますが、ノーマルモードでは急発進が抑制されません。ノーマルモードは、坂道発進などでアクセルペダルの踏み込みが必要な場合にも、通常通り発進できるためのものです。

しかし、D社の製品はこのような切り替えスイッチを有しておらず、一度急発進防止装置を車に取り付けたら、永続的に、アクセルペダルの急な踏み込みが異常と判断され、急発進が抑制されるというものでした。

ところが、Cさんは、D社の製品を車に取り付けた状態で、アクセルペダルや車の電源スイッチなどを特定の順序で操作すると、急発進防止モードが解除されてノーマルモードに切り替わることに気づきました。これは、D社の製品が実質的に切り替えスイッチを有していることに相当します。

そこで、特許権侵害の成立が疑われるため、D社に対して警告状を送付することとなりました。

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